「私の嫌いな10のジャズ・ミュージシャン」(その8.ジャンルに拘らないジャズ・ミュージシャン)
NHK-FMのセッション2008を毎週録音して聴いています。最初の国籍不明の雄叫びと司会者の無味乾燥なしゃべりを無視すれば、「最近の日本のジャズ」をそこそこに楽しむことができます。学校の音楽の授業で課題曲をこなすように清く正しく美しくバイオリンを奏でる方や、文化祭の乗りで実力にバラツキのある身内バンドを引き連れて登場した親の七光りピアニスト、音だけ聞いても全然面白くない冗談音楽を軽くみているバンドのライブなど最近の「収穫」です。
本題ですが、「ジャンルに拘らない」ことを売りにしたバンドを組んでいる(二流の)ジャズミュージシャンがよく出てきます。これには猛烈な嫌悪感を抱きます。自分でやりたい音楽をやることは自由ですが、ジャズのリスナーを前提にしている(お金を取る)以上はその期待に応えてこそプロのはず。もちろん、その期待を上手に裏切ってもいい。ところが、その期待を<無視>して、「自分が本当にやりたかった」と称する陳腐な音楽を聞かせるとは何事でしょうか?実際そのほとんどは不思議と往年のニューミュージック(!)か環境音楽(!!)の範疇にしっかりと収まる。何か高尚なことを自分達がしているかのごとき言動も腹立たしい。
ジャンルというのは先人達がそのリスナーと試行錯誤を重ねながら築き上げたひとつの文化(成果)であり、芸術(一定の材料・技術・様式を駆使して美的価値を創造・表現しようとする人間の活動およびその所産)だと思います。そのジャンルというものをしっかりと踏まえながらジャズと向かい合っているリスナーの期待を蔑ろにするとは何と高慢な態度でしょうか。自分を神の如く語るに等しい。
どうしてもジャズとは無縁に「自分が本当にやりたかった」ことをしたいのであれば、まずはジャズミュージシャンという看板を降ろし、過去をソウカツし、この後の人生を賭けてほしいものです。そんな勇気も気概もリスク管理もできないのであれば、しっかりとジャンルに拘り、そこでの自分の役割と目標を明確にした仕事をしてほしいものです。
以下、特に酷かったので記憶に残っているバンドを列挙しておきます。
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こんにちは。
>「ジャンルに拘らない」ことを売りにした
まさに、それってよく分かります。どれに対しても自分の実力が無い。
だからといって、全く新しい方向性を持っているわけではない。
つまり、下手だと言われても、「これは自分というジャンルだから」という言い訳が一緒についてくるのが目に見えます。
まだ、下手でも、ジャズならジャズの一流を目指していると言う方が、真摯だと思います。
これっていうのは、食べ物屋でも同じですよね。
「無国籍料理」
これは、フランス、イタリア、インド、和食、というジャンルではなく、「自分料理」なわけですね。
特においしいわけでも無ければ、最高に不味いわけでもない。
で、言い訳は・・・・となるわけです。
なんか、「自分探し」と言っている連中と変わりないなあと思います。
それにしても、最近FMは聞いていなかったのですが、
昔は私も「セッション85」とか聞いていました 歳ですね。苦笑
投稿: eric_brea | 2008年5月 4日 (日) 19時42分
eric_breaさん
この違和感や嫌悪感を説明する際に「無国籍料理」の例えをするとよく分かりますね。確かに私も美味しいと思った記憶がありません。また、「自分探し」にも通じているとの指摘は鋭いと思います。やっていることに対する真摯さや自信の欠如があるから「言い訳」するんでしょうね。
今回は特に本質をついたコメントありがとうございました。
投稿: FAD | 2008年5月 5日 (月) 05時54分
親の七光りピアニストって誰のことだろうとワクワクしながらリンクしているサイトに飛びました、ピアニストの名前を見ておもわず大笑い。 オヤジはどことなく怪しげな人物ですが息子はさすがに親の七光り娑婆の苦労も知らなさそうなオニイチャンじゃないですか。 オヤジは勝さんとか言いましたっけ? さて、ジャンルに拘らない という点については 最近意外と JAZZ風なJ-POPシンガーが多いですよね BirdとかMelting Soulとか畠山美由紀とか・・・・ぜひ、一度 こういう人たちについて論評願います。(リクエスト)
投稿: Amicizia | 2008年5月 5日 (月) 14時34分
Amiciziaさん
息子バンドは高校生のスクエアコピーバンドみたいでしたよ。特にサックスはシンセで代用したほうが「安心して聞ける」のではないかと思うほどショボカッタ。
リクエストのあった3件をいずれもネット上で(タダで)聞ける範囲ですが確認しました。芸術を創造しているのではなく、音楽を大衆文化として生産・消費しているという感じで、音楽を芸術だと思っている方は恐らく2度と聴きたいとは思わない類の音ではないでしょうか。特に、引用しているオリジナルを知っていると冒涜に聞こえてくる場合もありますね。先人への敬意が感じられません。
やはりジャンルに拘らないというのは芸術家としては堕落であり、「逃避」ではないかと思います。それでも商売にはなっているでしょうが。
投稿: FAD | 2008年5月 5日 (月) 20時17分