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うつを嫌う

NHK教育テレビで「今夜のテーマは30代のうつ」を観ました。安易かつ残酷な内容でした。

中堅以上の企業に勤務する30代の男性だけを事例として取り上げているのは、社会現象としてうつ病を安易に括ろうとするNHKの意思なのでしょうが、これはそれ以外の30代(自営業、失業者、女性など)への一種の差別として問題です。しかしもっと重要なことは、出てくる事例の多くは「適応障害」という病名が相応しいか、適応障害を拗らしてうつ病になったものがほとんどだということです。(天皇家の長男の奥さんが適応障害という診断なのでこの病名への「報道管制」があるのかもしれません。)

そもそも、遺伝的な要因のうつ病は人口の0.3%しかいないとされています。番組の事例の多くは、職場環境との不適応から体調を崩してしまったものばかり。うつ病と適応障害では、憂鬱な気分に苛まれ体調を崩す、という症状は似ていてもその原因が異なるのです。

職場起因の適応障害を「社内うつ」とする方もいますがこれも私はあまり好きではない。ある元・適応障害の方のブログから引用すると、

流行言葉になりつつある「うつ」には何か周辺事情を覆い隠す響きがあります。(中略)「遺伝的な要因」によって、会社や上司の責任を逃れようとする意図すら感じていました。「適応障害」という響きには、その環境にも問題があるという響きがあるのとは対照的です。

番組では企業の経営環境の厳しさや世代論などの問題にも触れていました。でもそれでは問題の本質には迫れません。企業で言えばはっきりと社長や上司の問題であり、加害者なのです。ガードレールの無い道を歩いていて自動車に撥ねられたら、道路管理者や自動車会社ではなく、運転手が捕まり、補償させられるのと同じです。ところが、番組の流れでは、本人に反省を強いて、病にまで到ってしまったのは無理をした自分の責任だった、というものがほとんどでした。実に残酷なことです。

「自殺者を嫌う」という記事を前に書いた通り、体調の異変(特に不眠)が続いたら、ある程度メンタルタフネスが残っているうちに、「面倒、恥ずかしい、大した事はない、などと自分に都合のいい理由」で先延ばしをしないでカウンセラーなり心療内科なりに行くことをお薦めします。その前に数日休んで様子をみるということがあってもいいでしょう。(中島義道も効きますよ。)

世間にある「うつ」という言葉のもつ安易さや残酷さを如実に示した番組でした。

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コメント

はじめまして。
コメントありがとうございました。
番組の中では3年で10人以上が「うつ」で休職する…これは異常だと思います。
社会はもちろん、企業経営者の責任でしょう。
異常事態になってあわてて動き出す…おかしいのでは?
小生も経験があるのでよく分かるのですが…
日本の企業社会はどうなったのでしょう?


nakappiさん
わざわざこちらにもコメントを頂き、ありがとうございます。
あえてこの種の番組の価値を言うなら、うつ病でも適応障害でも、医師の診断書があれば休職しやすい風潮を作り出してくれていることがありますね。
以前なら、自殺とまで行かなくても内臓疾患などカラダに症状が及んでから休職となる方や、突然に倒れる方が多かったように思います。(3000人ほどの規模の私の勤務先ではこの2年でも3名が「以前」の状態を経て死に到りました。)
昨今の日本の企業社会では、不況や競争の激化というより、株主価値を追い求めた結果として、さまざまな矛盾を従業員に押し付ける風潮が強くなっているものと理解します。これは従業員側としても構える必要がありますね。

FADさん、こんにちは。
「うつ」問題・・・私はその番組を見ていないのですが、前にNHKで同じような夫婦で出演して「うつ」の問題を取り上げていました。

そのときも思ったのですが、「うつ」を患者本人の責任に帰結する内容の番組作りだったのを覚えています。
そして、その「うつ」の人間は完全なる社会復帰が出来ないという流れの番組構成であったと思います。FADさんが言うように、加害者がいて被害者がいるという見方が極めて真っ当であるのではないかと思います。
しかしながら、患者本人に責任を帰結することを報道することで、社会的復帰不可能への色眼鏡が形成されてしまう。
そのようなことを前々から思っていました。

2001年くらいだったと思いますが、私も発症して3ヶ月以上会社を休んだのですが、そこは従業員6人の町工場での出来事でした。
ですから、どこでも起こりうる出来事なのだと思います。

前も書きましたが、未だ薬を飲み続けていると。
今年転職した会社にも内緒です。病歴を書いていないと「クビ」になるかもしれないと、たまに思ったりもしていますね。

毎度まとまりの無い文章ですみません。


eric_breaさん
同じぐらいの期間、会社を休んでいたようですね。
適応障害と考えれば、休んだ後に元の仕事に戻る事がいいのかどうかは、職場環境におけるストレッサーや本人の思考の変化などを見ながら、第三者(医師やカウンセラー)が決めること、と聞いていて、実際に私は「社内転職」(実際には転部)をしました。
休職や服用などは現在の業務に支障がなければ自ら勤務先に述べる内容だとは思いませんが、規定などはよく知りません。ただ、私の場合、新しい職場に異動した直後に上司には個人的に説明をするようにはしています。
問題は復帰をどう定義するかに思います。まったく同じ仕事に戻り、元の職場の環境もまったく代わっていなければ、普通は再発すると考えます。このあたりへの理解がないと、個人の問題として処理されてしまうんですよね。

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